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【NFL Guide】ERFA・RFAとは?ーFA制度とテンダーの仕組みー

オフシーズンとなりちらほらと「再契約」のニュースを目にするようになりました。先日、JAXChristian Braswellとの再契約がひっそりと発表されました。ERFAだったようですが、10年近く経ちますがそのあたりの仕組みをよくわかっていないことに気づきました。皆さんの中にも私のように「ERFAやRFAって聞くけど何が違うんだっけ?」と曖昧になっている方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、この少し複雑なERFA、RFAの仕組みについて整理してみました。「Accrued Seasons」や「Credited Season」なども含めて、「初心者の方」や「調べるのが面倒だけど興味ある」という方の参考になれば幸いです。
  • 選手の自由度は「実働年数」で決まる
    NFLのFAは実働年数(Accrued Seasons)によって「UFA・RFA・ERFA」など厳格に自由度が分けられる。
  • ERFAとRFAの決定的な違い
    ERFAは実質チームの言い値での契約一択。RFAは他チームと交渉できるが、元チームに強力な引き留め権(テンダー)がある。
  • 最低年俸を決める「Credited Seasons」
    実働年数とは別に選手の給与額を決定するための基準も存在し、労使協定によって細かい金額が設定されている。

NFLにおけるFA(フリーエージェント)の4つの形

そもそもFAとは何か?

NFLファンが日常的に使う「FA」という言葉。一言で言えば、「現在の所属チームとの『元の契約』が終了した状態にある選手」のことです。しかし、ここからがNFLのユニークかつシビアなところで、「契約が切れた=自由に他チームに行ける」とは限りません。

後述する『Accrued Seasons(実働シーズン)』に応じて、その自由度は以下の4段階に厳格に管理されています。

FAの4つの形

ステータス 自由度 実態
UFA
(Unrestricted FA)
★★★★★ 真のFA。32チームどこにでも行ける。
SFA
(Street FA)
★★★★★ 契約途中で解雇された選手。即時の自由。クビになった瞬間から32チームと契約可能。
RFA
(Restricted FA)
★★★☆☆ 条件付きの自由。他チームと交渉できるが、元チームに優先権がある。
ERFA
(Exclusive Rights FA)
★☆☆☆☆ 名前だけの自由。チームが提示を出せば、残留以外の選択肢はほぼない。

自由を決める尺度:Accrued Seasons

選手の「自由」を決めるのは、Accrued Season(実働シーズン)という規定であり、NFL公式にて以下のように説明されています。

この規定は、選手のFAのステータス(UFA、RFA、ERFA)を決定するために用いられる。

「Accrued Seasons」としてカウントされるためには、選手は該当するシーズンのレギュラーシーズンにおいて、少なくとも6試合以上「フルプレー・ステータス(出場可能な状態、または本来出場可能な状態)」で登録されていなければならない。

また、契約下にある選手がAccrued Seasonsを獲得するには、チームが指定した強制参加日にトレーニングキャンプへ合流する必要がある。もし選手が「相当な期間(material period of time)」にわたってホールドアウトした場合も、そのシーズンをAccrued Seasonsとしてカウントできないリスクが生じる。

このフルプレー・ステータスにはActive Roster、IR、PUPなどが含まれ、PSは含まれません。

Accrued Seasonsが3年未満でERFA、3年でRFA、4年以上でUFAとなります。

NFLやチームの公式サイトにある経験年数はこのAccrued Seasonが記載されていることが多いと思います。

給料を決める尺度:Credited Seasons

先ほどのFAのステータスを決めるAccrued Seasonsとは別に、選手の最低年俸を決めるのがCredited Seasons(最低年俸算定シーズン)になります。NFL公式では以下のように説明されています。

多くの福利厚生を算出する基準として用いられ、特に選手の最低年俸(ミニマム・サラリー)を決定する際に最も重要な役割を果たす。

「Credited Season」としてカウントされるためには、選手は該当するシーズンのレギュラーシーズンにおいて、少なくとも3試合以上「フルペイ・ステータス(全額給与支払い対象となる状態、または本来そうあるべき状態)」で登録されていなければならない。

なお、出場停止処分を受けている間は選手はチームの活動から外され、給与も支払われません。そのため、その期間はフルペイではなくなるためCredited Seasonのカウントの対象外となります。

これはNFLと選手会(NFLPA)が結んでいる労使規定(CBA:Collective Bargaining Agreement)という約10年ごとの大きな契約更新があり、そこで定められています。直近では2020年に行われ、2030年までの最低年俸があらかじめ決まっています。基本的には毎年$45,000ずつ上昇、Credited Seasonによっても一定年数ごとに上昇していますね。

それ以降の分は2030年ごろに行われると思われる次回のCBAで定められることとなります。その時、NFLのビジネスがさらに巨大化していれば、一気にベースアップが行われるかもしれませんね。

年 / Credited
Season
0年 1年 2年 3年 4-6年 7年以上
2026 $885,000 $1,005,000 $1,075,000 $1,145,000 $1,215,000 $1,300,000
2027 $930,000 $1,050,000 $1,120,000 $1,190,000 $1,260,000 $1,345,000
2028 $975,000 $1,095,000 $1,165,000 $1,235,000 $1,305,000 $1,390,000
2029 $1,020,000 $1,140,000 $1,210,000 $1,280,000 $1,350,000 $1,435,000
2030 $1,065,000 $1,185,000 $1,255,000 $1,325,000 $1,395,000 $1,480,000

それぞれを表でまとめるとこんな感じです。

項目 Accrued Season Credited Season
主な目的 FA資格(RFA/UFA)の判定 年金額や最低年俸額の決定
カウント条件 1シーズンで6試合以上
(フルプレー・ステータス)
1シーズンで3試合以上
(フルペイ・ステータス)

【case: Christian Braswellの場合】

実態 Accrued Seasons Credited Seasons
2023 1年通してActive Rosterに 1年 1年
2024 シーズン前にカットされPSに。3回Active Rosterに昇格 0年 1年
2025 1年通してActive Rosterに 1年 1年

つまり、Accrued Seasonが2年のため、2025年シーズン終了後にERFAとなり、JAXが提示した条件で独占契約を結ぶ以外の選択肢はありませんでした。もし2024年にカットされてSFAとなった際に、他のチームと複数年契約を結んでいればRFA、あるいはUFAになっていたかもしれません。

そして、ERFAでは最低年俸で契約することが実質決まっているため、2026年の年俸は$1,145,000となります。選手によって微妙に年俸が異なっているのはこういう仕組みのようですね。

ERFAとは?

最も自由のない「名前だけの自由」であるERFAですが、公式では以下のように説明されています。

Accrued Seasonsが3年未満で、契約が満了した全ての選手を指す。

もし元の所属チームが、その選手のCredited Seasonに基づいたリーグ最低年俸での1年契約を提示した場合、その選手は他チームと交渉することができない。

基本的にはドラフトされると4年契約、UDFAで3年契約となるため、最初の契約を満了した選手は当てはまることはなく、一度カットされて再度契約した選手がこれに当てはまります。

選手に与えられる選択肢は、この提示を飲んで契約する、あるいはこのシーズンはプレーしないこと、つまり引退やホールドアウトしかありません。ERFAに当てはまる選手であればよほどのことがない限りホールドアウトはないでしょうから、実質所属チームの言い値での契約一択となります。このERFAを乗り越えてAccrued Seasonsが3年になれば次に説明するRFA、4年になれば全ての制限がなくなったUFAへとステップアップし、ようやく他チームとの交渉権が得られるのです。

RFAとは?

ERFAを乗り越えた、あるいはUDFAで契約満了となった選手が次に到達するステータスがRFAになります。

Accrued Seasonsが3年で、契約が満了した選手を指す。RFAはどのチームとも自由に交渉・契約ができるが、元の所属チームは「テンダー(Qualifying Offers)」と呼ばれる条件を提示することで、優先交渉権(Right of First Refusal)や、移籍の際のドラフト指名権による補償を得ることができる。チームがテンダーを取り下げた場合、その選手はUFAとなる。

チームはリーグイヤーの開始までに、これらのテンダーを提出しなければならない。

またいろいろ新しい言葉がたくさん出てきましたね。

要するに、RFAは他のチームもこの選手を獲得するためにオファーをすることができますが、元の所属チームがこのテンダーを出した場合には、そのオファーにマッチ(同条件で契約)することで、流出を阻止できる、ということです。もしマッチしない場合にはその選手が流出する代わりにそれぞれのテンダーに応じた見返りを得ることができます。

つまりテンダーが非常に重要になってくるのですが、テンダーには4種類あり、その選手の重要度によってチーム側が設定することになります。

【2026年度のRFAテンダー予想額のイメージ】
※金額はOver The Cap等の予測に基づく目安です。

  • 1巡目テンダー(First-round tender): 約 $8,107,000
  • 2巡目テンダー(Second-round-tender): 約 $5,811,000
  • 元の指名順位テンダー(Original-round tender): ROFRより少し高い(約 $3,700,000前後)
  • 優先交渉権(Right-of-first-refusal:ROFR) 約 $3,547,000(一番安い)

年俸は、以上の金額あるいは前年の年俸の110%のいずれか高い方となります。

1. 1巡目テンダー

最も高額な1年契約の提示です。選手が他チームと結んだ「オファーシート」に対し、元所属チームが同条件での契約(マッチ)を見送った場合、新チームからドラフト1巡目指名権を受け取る権利を得ます。

2. 2巡目テンダー

2番目に高額な提示です。マッチを見送った場合、新チームからドラフト2巡目指名権を受け取る権利を得ます。

3. 元の指名順位テンダー

後述のROFRよりも少しだけ金額が高く設定されています。マッチを見送った場合、新チームからその選手が本来ドラフトされた巡の指名権を得ます。

4. 優先交渉権オファー(Right-of-first-refusal tender: ROFR)

最も安価な提示です。元の所属チームは他チームのオファーシートにマッチする権利を持ちますが、このテンダーにドラフト指名権の補償は一切伴いません。

UDFAはどうなる?

UDFA出身選手のRFAは、当然「Original-round(元の順位) 」というものが存在しないため、補償指名権は発生しません。そのため、UDFAの選手に一番安いテンダーを出すと、自動的に「ROFR(補償なし)」扱いになってしまいます。

もしチームが優秀なUDFAの選手を引き留めたい場合には、ROFRでタダで奪われるリスクを冒すか、年俸が跳ね上がるのを承知で「2巡目テンダー」や「1巡テンダー」にランクを上げるか、という苦渋の決断を迫られることとなります。

ちなみに近年1巡目テンダーや2巡目テンダーを使われた例としては、Jakobi Meyers(2022年/NE/2巡目テンダー)、Allen Lazard(2022/GB/2巡目テンダー)、Taysom Hill(2020/NO/1巡目テンダー)などがあります。

あまり使われることは多くないようですが、今年はDALのキッカーであるBrandon Aubreyにこれが適応されるのでは、と言われているようですね。

この記事を書いている間に、DENの2022年のUDFA、Ja'Quan McMillanが2巡目テンダーを提示されたようですね。よほど期待が高い、ということなのでしょう。

どういう場合に奪われるのか?

とはいえ、基本的には相手が提示した条件とマッチする限り選手を奪われることはありませんよね?じゃあどういうときにとられるのかというと、

1. 元チームが高すぎて払えない、と断念する場合

シンプルですね。元チームのキャップが厳しい場合、超高額オファーを提示され、それを払うくらいなら選手を手放した方がいい、と判断されれば奪われることとなります。このとき1巡目・2巡目テンダーなどの場合は指名権がもらえますが、ROFRのみの場合はタダで持っていかれてしまいます。

2. 「毒薬条項(Poison Pill)のような仕掛けがある場合(現在はほぼ禁止)

一昔前には「元のチームだけが実行困難な条件」を契約に盛り込む手法がありました。この例はRFAではなくトランジションタグでしたが、同じような制度なのでここで説明します。トランジションタグも他チームもオファー可能で、元チームがその条件にマッチすれば引き抜きを阻止できます。

2006年にSEAが当時のトップG、後の殿堂入り選手であるSteve Hutchinsonにトランジションタグを適用しました。本来であれば最悪オファーが来てもマッチすればいいだけのことではありましたが、MINが「この選手がチーム内で最高給のOLでなくなった瞬間、全額(7年49M)が完全保証される」との条項を入れました。SEAには当時彼より高給のLT、こちらも後の殿堂入り選手であるWalter Jonesがいたため、SEAがマッチした瞬間に巨額の支払い義務が生じる仕組みとなるためマッチできず、結果MINにタダで掻っ攫われたのです。

現在ではこのような条項は、CBA(労使規定)では禁止されており、基本給、ボーナス、期間といった「主要条項(Principal Terms)」が同じでないと成立しないことになっています。

このようなパターンで選手を失う場合がありますが、基本的には元チームに戻ることがほとんどです。

ERFAやRFAでテンダーを受けなかった場合は?

元チームより何のオファーもなかった場合、そのシーズンにUFAとなりますが、ストリートに放り出される、と言う意味では実質SFAみたいなものですね。

そこでUFA扱いになったとしてもAccrued Seasonsが4年に至るまでは残念ながらいつまでもERFA、RFAが付き纏います。


まとめ:NFLのビジネスサイドを楽しむために

今回ご紹介したERFAやRFAといったルールは、一見すると選手にとって厳しい「縛り」に思えます。しかし、限られた予算(サラリーキャップ)の中でいかに若手を守り、戦力を維持するかというGMたちの腕の見せ所でもあります。

これからは「再契約」のニュースを見た際に、その選手がどの階層(ERFA/RFA/UFA)にいるのか、そしてフロントがどのような「テンダー」を選択したのかに注目してみてください。

この記事が、皆さんのNFL観戦をより深く、楽しくする一助となれば幸いです。