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NFL Jacksonville Jaguars(ジャクソンビルジャガーズ)の応援ブログ

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【2025選手紹介】"二刀流の異才" | 第1回:Travis Hunterとは何者か

高校時代から全米No.1評価を受けていたHunterは、Deion Sandersに師事するためジャクソン州立大学に進学。伝統やブランドよりも「誰の下で、何を学ぶか」を優先したその選択は、すでに型破りなものでした。

その後、彼は師であるDeionとともにコロラド大学に転校し、全米中継の舞台で“二刀流”の本領を発揮。WRとCBの両方で出場するだけでなく、1試合で100スナップ以上こなすという桁違いのスタミナとプレーで、瞬く間に話題の中心となりました。

今回は、そんな彼を指名できたことで上がったテンションそのままに、記事を書いていこうと思います。

プロフィール

名前
Travis Hunter(トラヴィス・ハンター)
ポジション
WR/CB
年齢
21歳(2003年5月18日)
出身地
ジョージア州サワニー
身長
6-1(185cm)
体重
185lbs(84kg)
出身大学
Jackson State(ジャクソン州立大学) → Colorado(コロラド大学)

3年間の主要スタッツ

スタッツ 2022
JSU
2023
Colorado
2024
Colorado
出場試合 7 9 13
レシーブ 17 57 96
ヤード 187 721 1,258
TD 4 5 15
INT 2 3 4
タックル 17 26 32

2022年:衝撃の選択

高校時代に全米No.1リクルート評価を受けたHunterは、数多くのオファーがある中で、Deion Sandersの誘いを受けてジャクソン州立大学に進学しました。5つ星選手がFCSの大学に進学するのは、実に20年ぶりという異例の出来事でした。

シーズン途中の負傷により出場は限定的だったものの、攻守両面で才能の片鱗を発揮。ディフェンスでは2インターセプト、オフェンスでも4TDを記録しています。

チームはレギュラーシーズンを11勝0敗で終え、サウスウェスタン・アスレチック・カンファレンス(SWAC)優勝。Hunter自身もSWAC新人王およびオールSWACセカンドチームに選出され、さらに1年生ながらFCS最優秀新人賞であるJerry Rice賞のファイナリストにも名を連ねるなど、別格の存在感を示しました。

2023年:
FBS初挑戦と挫折、再起

2023年は、Hunterにとって初のFBS挑戦となりましたが、開幕戦からその才能を存分に見せつけました。シーズン初戦のTCU戦では、なんと144スナップもプレー。CBとしてレッドゾーンでのインターセプトを奪い、オフェンスでは11レシーブ119ヤードを稼ぐという圧巻のパフォーマンスを披露しました。

35℃を超えるの猛暑の中、129スナップ以上をこなした後も「まだ疲れてない、もう一度行ける」と語ったそのスタミナは衝撃的で、この45-42の大金星に大きく貢献しました。

その後も1試合平均110スナップ超で攻守にわたって出場を続けましたが、第3週のコロラド州立大戦でレイト気味のタックルを受け肝臓を負傷。第4~8週は欠場を余儀なくされました。

それでも終盤には復帰し、再び攻守両面で存在感を発揮。チームは4勝8敗と苦戦したものの、Hunterのシーズンを通した活躍が高く評価され、カレッジフットボール界で最も多彩な選手に贈られるPaul Hornung賞を受賞しました。さらに、コンセンサス・オールアメリカンおよびオールPac-12にも選出されています。

圧巻の2024年:
主役となった舞台

2024年、Hunterは数々の大舞台で勝負強さを発揮し、その存在が試合の流れを変えたと言っても過言ではありません。中でも特に印象的だった4試合を抜粋して紹介します。

開幕戦
vs ノースダコタ州立大 (NDSU)

FCSの強豪を迎えた初戦、Hunterは132ヤード・3TDの大暴れ。特に試合終盤、相手DBに密着マークされながらも驚異的なキャッチで決勝TDを奪い、31-26の接戦を勝利に導きました。

vs ベイラー大学 (Baylor) | 9月21日

第3Qには46ヤードのロングレシーブで反撃の口火を切り、オーバータイムでは自軍ゴール前2ヤードで相手RBに鋭いタックルを浴びせファンブルを誘発。このプレーが決定打となり、初のBig12カンファレンス戦を劇的な勝利で飾りました。

vs セントラルフロリダ大学 (UCF) | 9月28日

シーズン中盤のUCF戦では、相手QBのRBへのパスを読み切り、驚異的なインターセプトを記録。直後にはハイズマンポーズを披露し、自らが候補であることを強烈に印象づけました。

vs ユタ大学 (Utah) | 11月16日

シーズン終盤の大一番。4th&8の場面で4人に囲まれながらも跳び上がり、激しい接触にも耐えてキャッチを成功させ、TDに繋がるシリーズを継続。

さらに試合終了間際にはトリックプレーが読まれて潰されそうになる中、咄嗟の判断で自らボールを持ち、守備を翻弄して5ヤードのTDランを決める離れ業も披露しました。

WR/CBとしての技術解剖

Travis  Hunterは、文字通り攻守両面でのスター選手であり、WRとしてもCBとしても、最高レベルのスキルセットを備えていると評価されています。

ここでは、それぞれのポジションにおける特徴と、彼の長所・懸念点について整理してみたいと思います。

WR:空中の支配者

キャッチ力

2024年、Hunterは捕球可能なパスの94%をキャッチするという驚異的な安定感を見せました。この数字は、2016年以降に75ターゲット以上記録した約1200人のWRの中でも上位5%に入るトップクラスの成績です。

空中でのボディコントロールやタイミングにも優れており、複数のディフェンダーに囲まれていても落ち着いてボールを追い、強靭な手で競り勝ちキャッチを成功させる力を持っています。

実際、2024年のユタ大戦では4人に囲まれながらも競り勝ってボールをもぎ取るという離れ業を披露。こうした球際の強さは、専門家からも高く評価されています。

ルートランニング

単なる直線のスピードだけでなく、瞬時の加速と減速を織り交ぜ、カットの角度やタイミングでDBを振り切る技術に長けています。さらに、プレーが崩れた際にも自らルートを変え、パスコースを作り出す起点としても機能できる選手です。

YAC

YAC(キャッチ後の獲得ヤード)でも高い能力を発揮しており、優れた加速力と視野によって、スクリーンやショートパスからでも一発TDを狙えるポテンシャルを持っています。

タックルミスを誘発する確率も平均以上。ただし、コンタクトを受けた際のパワーや耐久性は平均的とされており、密集状況ではやや分が悪い場面も。それでも、スペースが生まれた際のトップスピードは非常に速く、一度抜け出せば一気にエンドゾーンまで運ぶホームラン能力を備えています。

課題と壁

とはいえ、課題がないわけではありません。

例えば、プレスカバレッジに対してはリリース時に体勢を崩される場面が見られました。カレッジレベルではスピードとステップで抜け出せたものの、NFLのよりフィジカルなCB相手にはリリースで苦戦する可能性が指摘されています。

また、ルートによっては緩急の使い方が単調であるという分析もあり、NFLの高度なDBにはパターンを読まれやすくなるリスクも懸念材料です。

CB:ロックダウンアーティスト

CBとしてのHunterは、稀有な機動力とWRとして培った卓越したボールスキルを武器に、高く評価されています。カバレッジ能力は年々向上を続けており、2024年にはPFFによるカバレッジグレードで全米トップを記録しました。

ミラーリングスキル

相手WRの動きをそのまま”トレース”する能力に長け、マンカバーで相手の1stリードを封じる力があります。特にカムバックルートやクロスルートへの対応では、「まるで相手に覆いかぶさるよう」と評価されるほどの密着ぶり。

ターゲットされた割合もわずか10%程度(378カバレッジスナップ中38回)とFBSで4番目に低く相手QBから敬遠される存在となっていました。

シーズンを通じて許したパスは22回、205ヤード、1TDのみ。1stダウンを許した回数も全FBSで最少の6回という、まさに鉄壁の数字を残しています。

ボールへの嗅覚

広い視野と守備範囲を持ち、プレーへの初動反応も非常に速いのが特徴です。俊敏なダッシュと加速力で瞬間的にパスコースへ飛び込み、タイミングよくボールにアタック。これによってターンオーバーやパス失敗を誘うプレーメーカー的存在でもあります。特にゾーンカバーでそれが光っていると思います。

実際、2024年にはターゲットにされた38本のパスのうち、約3分の1でインターセプトかパスブレイクアップ(PBU)を記録しています。

制空権

空中戦では優れた跳躍力と長いリーチを活かし、高い放物線のボールでも頂点で競り勝つことができます。まるでWRのようにボールの軌道を読み切って自分のものにするインターセプト能力は別格です。

2024年には4インターセプトを記録。そのうち複数はエンドゾーン付近での飛びつきやダイビングキャッチによるビッグプレーで、勝敗に直結する場面でも輝きを放ちました。

改善点と伸びしろ

一方で、CBとしては「高いポテンシャルがある反面、まだ技術的に粗さが残る」という評価もあります。

特に課題とされるのがフットワーク。縦に速いWRに対しては、腰の回転がやや遅れがちで、バーティカルルートで体を密着を維持する際に硬さが見られるという分析があります。

また、バックペダル時に上体が起きてしまいバランスを崩す場面があり、NFLレベルの俊敏なスロットWRに対応できるかという点で、機動力に関する不安も指摘されています。

加えて、フィジカル面の強化も課題とされており、ブロックを受けた際に抜け出すのに苦労するケースや、より重量級のWRとのマッチアップ経験が少ない点も今後の成長ポイントとして挙げられています。

比較不能の才能——
歴代レジェンドとの対比

Travis Hunterほどの多才な選手は、近年のカレッジフットボール界でも前例がない存在です。その特異性を語る際には、往年のレジェンドたちと比較が比較されることがしばしばあります。

ある記者は彼のプレースタイルを「Deion SandersCharles WoodsonChamp Baileyのような殿堂入り級のタレント」と称賛。また、NFLのアナリストたちは、Hunterの将来像として、CBであればDarius SlayStephon Gilmore、WRとしてはGarrett WilsonDeVonta SmithStefon Diggsといった現役トップクラスの選手たちの名前を挙げています。

Deion Sanders自身も、Hunterのことを「自分のような“本物の二刀流”」と評価し、「技術的には自分よりも上かもしれない」とまで語るほど。また、元NFLのCBであるAqib Talibも「彼は今すぐプロでもCBとして通用する。WRとしてもローテーションに入れる」と、その完成度の高さを認めています。

受賞歴まとめ
(2022~2024)

2022年
  • SWAC新人王
  • All-SWACセカンドチーム
  • HERO Sports FCCフレッシュマン・オールアメリカン
  • Stats Perform FCSフレッシュマン・オールアメリカン
2023
  • Paul Hornung賞(最も多才な選手)
  • Consensus All-American
  • All-Pac-12ファーストチーム(CB)
  • All-Pac-12セカンドチーム(AP(オールパーパス)/ST)
  • アカデミック・オールアメリカン
2024年
  • Heisman賞(年間のカレッジ最高の賞)
  • Walter Camp賞(年間最優秀選手)
  • Chuck Bednarik賞(年間最優秀守備選手)
  • Fred Biletnikoff賞(年間最優秀WR)
  • Paul Hornung賞(2年連続2回目)
  • Lott IMPACTトロフィー(人格と運動能力に優れた守備選手)
  • AP年間最優秀選手賞
  • Sporting News年間最優秀選手賞
  • アカデミック・オールアメリカン・オブ・ザ・イヤー
  • Big12年間最優秀選手賞
  • All-Big12ファーストチーム(WR/CB)
  • Unanimous All-American

これだけの賞を3年間で受賞した選手は、FBS史上でもTravis Hunterただ一人と言っても過言ではありません。

次回予告

攻守両面で歴史的な活躍を見せるTravis Hunter。その”二刀流”は、単なる話題性にとどまらず、フットボールの常識すら揺るがしかねない挑戦です。

今や”二刀流”と聞いて思い浮かぶのは、MLBの常識を覆し、ルールさえ変えた男・大谷翔平でしょう。

次回は、Hunter大谷翔平に共通する価値観、そしてMLBとNFL、それぞれの構造の比較などをお伝えしようと思います。

シリーズ一覧:“二刀流の異才”