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NFL Jacksonville Jaguars(ジャクソンビルジャガーズ)の応援ブログ

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【2025選手紹介】"二刀流の異才" | 第4回:ファンとメディア、そして未来

さて、今まで長々と書いてきましたが、今回で最後になります。なんかすでに2週間も経過してルーキーミニキャンプも始まり、少し落ち着いてしまいましたね。
最後はHunter指名に対する周囲の反応についてとりあげます。

SNSの爆発とファンの熱狂

指名直後の熱狂

ドラフト当日のSNSではJAXファンを中心に大いに盛り上がりました。JAX公式X(旧Twitter)には「#DUUUVAL」とともに喜びの声が溢れ、JAXのレジェンドであるFred Taylorも歓喜で絶叫する投稿を行っています 。

Hunterの持つスター性や万能ぶりから、ファンの多くは「ドラフト最高の選手を手に入れた」と興奮し、将来への期待を口にしました。

指名翌日には早くも「Trevor Lawrence+Travis Etienne+Brian Thomas Jr.+Travis Hunterという攻撃陣は凄いことになる」といった投稿もなされ 、Hunter加入によるチーム強化に期待する声が後を絶ちませんでした。

また、JAX公式が投稿した指名の裏側動画には、「映画のワンシーンみたいだ」「この物語が始まるのをずっと待ってた」といったコメントが並び、50万回以上再生されました。

youtu.be

一方、トレード相手となったCLEのファンからは皮肉混じりのミームが次々と投稿され、「Travis Hunterを指名できる位置からトレードダウンするチームには決してなりたくない」「CLEはまさにその“自爆ボタン”を押した」といった自虐的なコメントが目立ちました。Hunterの「自分を指名しないミスをするな」という事前メッセージを引き合いに出し、「それを文字通りやったのがCLEだ」とする投稿も話題を呼びました。

一部ファンの懸念と冷静な声

熱狂する声が大半を占める一方で、時間の経過とともに冷静な分析や懸念を示すファンの声も出てきました。特にJAXが支払ったトレードの大きな代償については、「見返りが大きすぎるのではないか」「QB以外にこれほど出すのはリスクだ」と不安視する意見もあります 。

とはいえ「選手自体は間違いなく特別だから後悔はない」「フロントが今必要な大胆さを発揮した」といった擁護的な声も多く、総じてファンの世論はハンター加入への期待感が勝っているようです。

個人的には今回のトレードはWin-Winだったと思っています。もちろんJAX的にはこの多大な対価でもHunterを手に入れたことによる満足感が勝っており全く不満はありません。一方、CLE側もトレードダウンした上にMason GrahamQuinshon Judkinsを手に入れ、さらには来年の1巡指名権までついてきたことを考えれば決して悪いものではなく、ファンとしてもそこまで不満はないのではないでしょうか。

メディアの評価は? 賞賛と懐疑のはざまで

専門メディアや評論家も、この指名に対して総じて高い評価を与えました。 複数の主要スポーツメディアによる主な評価とコメントを現地記事から引用します。


Pete Prisco, CBS Sports - Grade: A+

「この動きはフランチャイズが今やるべきことだった。Hunterはスターで、このドラフトにおける最高の選手だ。JAXは大胆であるべき時に大胆になった。素晴らしい動きだ」

Robert Zeglinski, USA Today - Grade: A+

「わずか3つの指名順位を上げるために大量の指名権を放出した時点で、Hunterというブルーチップの逸材を手に入れることがJAXの本命だったのは明らかだ。彼はNFLでも両方のポジションをプレーしたいと言っており、JAXも実際にそれをやらせるだろう。

オフェンスでは、Brian Thomas Jr.とのコンビでリーグ屈指のWRデュオを形成し、Trevor Lawrenceにとっても安定した土台となるだろう。ディフェンスでは、QBや
OCに眠れぬ夜を過ごさせるシャットダウンコーナーになれる。

“ジェネレーショナル”という言葉は近年乱用されがちだが、Hunterに関しては当てはまるどころかむしろその形容が控えめに思える。彼こそがこのドラフトで最高の選手だ。」

Matt Vanderame, Sports Illustrated - Grade: A

HunterはNFL史上でも類を見ない特異な才能の持ち主だ。大学ではWRとCBの両方で活躍し、直近2年で153レシーブ・1,979ヤード・20TD(うち15TDは最終年)を記録し、ディフェンスでは同期間に7INTを奪取している。

昨年はHeisman賞、Fred Biletnikoff賞(年間最優秀WR)、Chunk Bednarik賞(最優秀守備選手)を総なめにした。要するに、Hunterは“ジェネレーショナル・タレント”——世代を代表する選手である。」

Nick Baumgardner, The Athletic - Grade: A

「今ドラフトにおいて、群を抜いて最も優れたフットボール選手。ダイナミックさと希少性において比類がない。近代NFLで彼のように2つの最も過酷なポジションをエリートレベルで兼任した選手はおらず、現行のNFL選手に例えるのは極めて難しい。

彼は片方に専念しても即戦力のスターとなれるだろう。まずはCBとして起用し、並行してWRとしての出場機会も設けていけば、いずれJAXはリーグ唯一にして最高の“本格的な二刀流選手”を手に入れることになるだろう。

このトレードは両チームにとって素晴らしい取引だった。JAXは多くの人が思っている以上に戦力が充実しており、一方でCLEはどうしても指名権の数を必要としていた。」

Vinnie Iyer, The Sporting News - Grade: A-

JAXは、来年の1巡指名権を含む多くの資産を差し出してHunterを獲得し、今ドラフト最初のサプライズを演出した。彼はチームが抱えるオフェンスとディフェンス両面の重要な課題を埋める存在となる。

オフェンスでは、昨年1巡WRのBrian Thomas Jr.と両翼を組む重要ターゲットとなり、ディフェンスではTyson Campbellと並ぶCB陣の要となるだろう。

唯一のマイナス要素は、獲得にかかったコストの高さだけだ。」

Charles McDonald, Yahoo! Sports - Grade: B+

JAXは今ドラフトで最初の大胆な一手を打った。新GMのJames Gladstoneは、古巣LAR仕込みの“指名権なんてくれてやれ(F○○ them picks)”アプローチに打って出た。

JAXはこのドラフトで最高の選手を手に入れ、その起用法をオフェンスかディフェンスか自由に決めることができる。しかし、Hunter自身は両方でプレーするつもりだと明言している。

JAXはドラフト前にHunterについて多くを語ってこなかったが、すでに自分たちにはフランチャイズQBがいると信じ、そのうえでHunterを獲得するためにトレードアップしたこの動きに文句を受けるのは難しいだろう。」

一方で少数ながら懐疑的な見解も存在しました。ESPNのMel KiperはJAXのドラフト全体を「B」と採点し、その中で「Hunterは並のプロスペクトではなく、私はプレシーズンから彼を全体1位評価していた。彼はオフェンスとディフェンス両面でJAXを確実に評価する。トレードアップの対価は重いが、その方針には納得できる部分がある。」と述べています。

www.espn.com

また、NFLのサラリー分析サイトOver The Cap管理人のJason Fitzgeraldは「QB以外のためにトレードアップするのは通常リスキーで、この代償を正当化するにはHunterがエリート選手になることが前提だ」という指摘も行っています 。こうしたコスト面の懸念はあるものの、総合的な論調は「それだけの価値がある稀代の人材」だという評価に傾いています。

専門家・OBの声と二刀流起用の議論

元NFL選手や各方面の専門家からも様々なコメントが出ています。Hunterの大学時代の恩師で“二刀流”の先駆者でもあるDeion Sanders(コロラド大HC)は、Hunter
指名に満面の笑みで喜びを示し、「息子のように誇りに思う」と語り、「彼は自分のような選手だが、より成熟しているかもしれない。」と称賛しました。

元JAXのWRであるJimmy Smithをはじめ、他のNFL選手からも祝福や称賛の声が上がっています。

一方で、元NFLのQBでアナリストのChris Simmsは「HunterはCBとしてよりもWRとしての方が優れている。ディフェンスはスパイス程度に少し加えるくらいがちょうどいい。彼はまだDeion Sandersの域には達していない」と冷静に評価しました。

このように、専門家たちはHunterのユニークさゆえに起用法にも熱い議論を交わしており、それ自体が彼への期待の大きさを物語っています。

“象徴”の意味とは何か

Travis Hunterは、NFLで両ポジションをレギュラーとしてこなすかもしれません。あるいは、どちらかに絞る未来が来るかもしれません。それでも、彼がスポーツ界にもたらした影響は消えません。

彼が体現しているのは、「自分の可能性を自分で決める」という哲学です。

大谷翔平がMLBで「常識を塗り替えた存在」になったように、HunterもNFLに問いかけています。「なぜポジションで選手を縛るのか?」「なぜ一つしか選ばせないのか?」と。

彼の存在は、選手に新しい視点を与え、チーム編成に新たな戦術的発想を促しています。

最後に:彼は“問い”である

HunterはNFLで成功するのか?

それは、この先の彼自身のパフォーマンス次第だと思います。でも、象徴というのは、結果だけで決まるものではありません。「何に挑戦したのか」ということが、それを形作るのではないでしょうか。

WRでもCBでも“本物”になれる選手が、同時にその両方で戦うことを望み、それを実行した。自分の意志で未来を選び、大学で証明し、プロの舞台でもそれを貫こうとしています。そう考えると、彼はもうただの有望ルーキーではないのかもしれません。

Travis Hunter──彼はNFLにとって、挑戦であり、問いであり、そして変革の起点となる象徴なのです。

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