
かつてない壮絶な数日間を経て最終的にはほぼシーズン終了時に望んだ結果となりました。Khanが初動から大きな間違いを犯してしまったことでこのような今までに例のない大騒動に発展してしまいました。Khanには今回のことで猛省してもらって今後はもっとフットボールに対して情熱をもって取り組んでほしいです。
では今回の騒動についてわかっている範囲でまとめていきます。
HC Liam Coen誕生までの流れ
1/6
- HC Doug Pedersonの解任、GM Trent Baalkeの留任を発表。
The #Jaguars are keeping GM Trent Baalke. He is staying. https://t.co/YufVgGUI5y pic.twitter.com/CiRDDx2fMp
— Ari Meirov (@MySportsUpdate) January 6, 2025 - オーナーのShad Khanは「Baalkeの留任はHC選考に影響を与えない」と発言。しかし、Zoomでの会見にてHC候補が説得力のある提案をすればBaalkeの解任も検討する可能性を示唆。
This Trent Baalke / Shad Khan / Liam Coen storyline is even funnier after watching this clip from two weeks ago.
— Dave Kluge (@DaveKluge) January 23, 2025
Shoutout @CoachspeakIndex. Consistently one of the best follows on Twitter.pic.twitter.com/BqGvPRUrBA
1/7
- HC候補10名を発表。
We have requested to interview the following candidates for our Head Coach vacancy. pic.twitter.com/pYHk3LnUjI
— Jacksonville Jaguars (@Jaguars) January 7, 2025
1/11
- Ben JohnsonとZoomで面談。
We have completed an interview with Ben Johnson for our Head Coach vacancy. pic.twitter.com/QNe10WmJQs
— Jacksonville Jaguars (@Jaguars) January 11, 2025
1/15
- Liam CoenとZoomでと面談。
We have completed an interview with Liam Coen for our Head Coach vacancy.
— Jacksonville Jaguars (@Jaguars) January 16, 2025
1/20
- Ben JohnsonがCHIのHCに就任。JAXの"setup"が気に入らないとしてHCに興味を持たなかったと報じられる。
Bear down: Chicago is finalizing a deal to hire Lions offensive coordinator Ben Johnson as its next head coach, sources tell ESPN. Bears are getting their man. pic.twitter.com/UwlLk3wNJZ
— Adam Schefter (@AdamSchefter) January 20, 2025 - JAXは、以下3名との2回目の面談(対面)を予定。
・Liam Coen(1/22)
・Patrick Graham(1/23)
・Robert Saleh(1/24)
1/22(AM)
- Coenが「JAXとの2回目の面談を受けないこと」を条件に、TBからアシスタントコーチとして史上最高額の契約を提示され、口頭で合意しOC留任を決意。
- CoenはJAXのHC選考から辞退。
Buccaneers offensive coordinator Liam Coen is taking himself out of the running for the Jaguars’ head coaching job to stay in Tampa on a new contract that now will place him amongst the highest-paid coordinators in the NFL, per sources.
— Adam Schefter (@AdamSchefter) January 22, 2025
Bucs are keeping their OC. pic.twitter.com/PWy5GP2uTy
1/22(PM)
- JAXがBaalkeを解任。
Statement from Jaguars Owner Shad Khan. pic.twitter.com/YDjGHvdn2z
— Jacksonville Jaguars (@Jaguars) January 22, 2025
1/23(AM)
- JAXがCoenに再度アプローチ。
・「新GMを選ぶ権限」
・「Ben Johnsonに提示された額と同等の報酬」
・「複数年契約」
を提示。 - この交渉はTBには秘密裏に行われる。TB側がCoenに連絡を試みるも応答なし。
1/23(PM)
- CoenがTBのHC Todd Bowlesに電話。「子供を医者に連れて行っている」と話す一方で、JAXのHCポジションについて再検討したい旨を簡単に伝える。
- その後、JAXのHCに就任することで合意。
1/24
- Liam CoenがJAXのHCに正式に就任したことが公式発表される。
We have agreed to terms with Liam Coen to become our Head Coach!#DUUUVAL pic.twitter.com/PeL3YzChYn
— Jacksonville Jaguars (@Jaguars) January 24, 2025
騒動の裏側
Coenがなぜこのような行動をとったのか、その詳細についてSports Illustratedの記者であるAlbert Breerの記事をまとめます。元記事は以下。
https://www.si.com/nfl/inside-messy-48-hours-that-made-liam-coen-jaguars-coach
TBとの契約交渉
- JAXでの最初のZoom面接を前に、TBのGM Jason LichtはCoenに「チームに残る条件」を尋ねた。
- Coenは「OCとしてNFL史上最高額の契約」を要求。TBのオーナーであるGlazer家はこれを承認しCoenに提示、チームが彼の残留を強く願っていることも伝えた。
- Grazer家とも面会し、経験を積むために1回目の面接は受けるよう勧められた。
JAXでの最初の面接後
- Coenは最初の面談で非常に良い印象を与え、HC候補3人の中の1人として2回目の面接に招待された。
- TBは「JAXでの2回目の面接を受けないこと」を条件に契約を提示。
- Coenは交渉を続け、最終的に1/22(水)午前、TBの3年契約を口頭で受け入れ、オーナーやHC、選手たちと連絡を取りその旨を知らせた。
JAXがGM Trent Baalkeを解任
- 同日午後、JAXがBaalkeを解任。この決定がコーエンの心を大きく動かした。
- JAXはCoenに「新GMを選ぶ権限」と「高額報酬」を含む魅力的な条件を提示。これが状況を一変させる。
秘密裏のJAX訪問
- Coenは1/23(木)午前、TB本部で契約書に署名する予定だったが、現れずCoenとの連絡もとれなくなった。
- 午後5時に1/24(金)に署名のため本部へ向かうことを提案しLichtも同意した。
- 1/24(金)午前10時になってもCoenと連絡がつかなかった。
- 午前11時にCoenの代理人がTBに連絡、Coenが「個人的な問題に対処している」と伝えた。その後数時間を待ち、LichtやBowlesが再度連絡をしようとしたが連絡は取れなかった。
- 午後5時過ぎにCoenはBowlesに連絡、「まだ個人的な問題に対処しているが、JAXとの状況が変わったため、JAXに行くことに決めた」と伝えた。
- 1時間も経たないうちにCoenがすでにJAX施設に到着しているとの情報がTBスタッフに伝わった。
- JAXは同日、面接スケジュールを調整し、ルーニー・ルール(マイノリティ候補への公平な面接機会)を満たすため、Patrick Grahamとの面接を実施し、Robert Salehの2回目の面接はキャンセルした。
最終合意
- CoenはJAXとの条件に同意し、HC就任が決定。
- JAXはルールを守りながら、彼を引き抜くための複雑なプロセスを乗り越えた。
ポイント
- TBとの契約: CoenがTBと合意寸前だったにも関わらず、JAXが提示した条件が状況を覆した。
- JAXの戦略: GM解任やルーニー・ルールの順守といった要素を慎重に扱いながら、Coenの勧誘を成功させた。
- 稀有な機会: Coenは新HCとして、新GMを選ぶ権限を得た。このような条件はNFLでも極めて稀。
Khanの決断
ここ数年、BaalkeがJAX低迷の主因であるということは周知の事実となっていました。前回の記事にも書きましたが、GMとしてBTJをはじめとしたドラフトでの成功は何例かあるものの、身体能力偏重の選手評価や一貫性のないドラフトFA戦略には疑問の声が大きく、またその人間性からHCとうまくコミュニケーションがとれずコーチが必要とする人材を獲得できない、またHC選考に大きな悪影響を与える、などが挙げられます。
しかし、周囲がどれだけその声を上げようとKhanはBaalkeを擁護し続けました。それはSF時代から上司に気に入られる能力、というのが唯一長けた能力であることを示唆します。
今回のHC選考でもBen Johnsonに"setup"が気に入らない、とBaalkeと働きたくないことを暗に示され、Liam Coenにも一度は断られました。もはや今回の流れを見ても「Baalkeの存在がHC選考に悪影響を与える」というのは紛れもない事実でしょう。
そんな中ついにKhanは正しい判断を下しました。以下が声明文の日本語訳になります。
「今週、Trent Baalkeと複数回にわたり協議を行った結果、双方にとって最善の道は、即時の「敬意ある別れ」であるという結論に達しました。Trentが過去5シーズンにわたり尽力してくれたことに対し、心から感謝しています。Ethan Waughは暫定GMを務め、引き続き新HC候補者の面接プロセスにおいて、他の関係者と共に重要な役割を果たします。私はJacksonvilleに勝利をもたらすチームを築くことに全力を注いでおり、選手やファンの皆さんのためにその目標を実現する新しいHCを紹介できることを楽しみにしています。」
遅すぎるとはいえその決断ができたことは称賛に値します。よほどKhanもCoenのことを気に入っていたのでしょう。それがまさかの辞退で相当ショックが大きかったと思われます。これをもってKhanのオーナーとしての信頼、実力が認められることはありませんが、傷は最小限に抑えられたのではないでしょうか。これが今回だけなのか今後切り替えてオーナーとしての実力を証明していくのかは彼の行動次第です。
今回の騒動の懸念点
さて、今回の騒動によりCoenはTBの一部ファンなどに「Snake」と非難されています。そもそもJAXのHCになったことに腹を立てている人もいないわけではないですが、一番多いのはそのプロセスに問題があった、との意見です。つまり、「JAXとの2回目の面接を受けないこと」を条件にしたTBとの口頭合意があったにもかかわらず、その後音信不通となり、その間にJAXと接触していた、というところに不快感があるようです。
TB目線からはどんな感じなのかと思いTBの記者Steven Cheahの記事をまとめてみました。元記事は以下。
Coenの急速なキャリアアップ
彼のキャリアの軌跡は間違いなく印象的です。LARのアシスタントからKentucky大学のOC、再びLARに戻り、その後TBへ。Coenは安定性への疑念を残しつつも、着実に階段を駆け上がってきました。TBのオフェンスへの影響から、彼が有能であることは明白ですが、これほどの頻繁な移動履歴は特に安定性が求められるヘッドコーチの役職においては懸念材料となりえます。
退団の倫理観
CoenがTBの契約延長を辞退してJAXのHC職を受け入れたこと、さらにTBからの連絡を無視したとされる点には疑問が残ります。子供の健康問題が本当だったとしても、JAXとの交渉中に連絡を断ったという状況は、印象を悪化させるだけです。物事には適切な進め方があり、Coenはその部分を見誤ったように見えます。
Shad KhanとJAXの賭け
JAXがわずか18試合のプレーコール経験しかない人物にチームの指揮を任せるという決断は、大きなリスクを伴うものです。TBで見せた才能は明らかですが、HC職はまったく異なる次元の挑戦です。豊富な人脈やNFLでのつながりがないことは、優れたスタッフを集めるうえでの障害となる可能性があります。特に、TBが現在のアシスタントの横滑り移籍を阻止した場合はなおさらです。
TBの反応とその余波
TBのファンや組織が裏切られたと感じるのは当然です。チームはCoenに投資し、輝けるプラットフォームを提供し、さらに大幅な昇給まで提示しました。それでも彼が離れる選択をしたことは、忠誠心の問題として痛手です。彼の行動が引き起こす感情的な反発は理解できますが、NFLはビジネスの世界でもあり、CoenがJAXをキャリアの次のステップと見なしたのは明らかです。
「蛇」のような行動という評価
Coenを蛇に例えるのは厳しい表現かもしれませんが、この一連の出来事を踏まえれば理解できます。秘密主義、意図的と見られる隠蔽、そして突然の方向転換は、確かにそのようなイメージを助長します。彼の意図がキャリアを重視したものであったとしても、透明性とプロ意識を欠いた進め方が問題視されるでしょう。
JAXにとってこのリスクは価値があるのか?
JAXの決断は、Coenの攻撃的な才能が、経験不足や不安定さというリスクを上回るかどうかにかかっています。彼がTrevor LawrenceをMVP級のQBへと育て、JAXのオフェンスを復活させることができれば、この賭けは成功するでしょう。しかし、もし不安定さや経験不足が彼に追いついた場合、この賭けは壮大に裏目に出る可能性があります。
個人的な感想
今回の騒動について、私個人としてはCoenはBaalkeを追い出した時点でHCになる前からすでにJAXのレジェンドだと思っているので、全面的にCoenを支持します。TBサイドが言っていることも一理ありますし、少し申し訳ない気持ちはあります。そもそも最初からKhanがBaalkeをクビにしていたら、結果は同じであったとしてもこんな騒動は起きなかったはずですよね。
とはいえ、TBの批判にも一定の反論をしておきたいと思います。
そもそも、アシスタントコーチというのは最終的にはHC職を目指すものであり、それをチーム側は許容するべきです。にも関わらず「2回目の面談を受けない」ことを条件にオファーを出す、というのはいかがなものでしょうか。連絡をとらなかったことについても、そんな条件をつけなければ堂々とJAXに行っていたでしょう。
もしどうしてもCoenを残したかったのなら、BowlesをクビにしてCoenをHCに昇格させるべきだったのではないでしょうか。とはいえ、プレーオフにも出場している調子のいいチームですし、さすがにこの状況でHCを切るのは難しかったのだと思います。ただそれくらいの覚悟がないと、有能なコーチを残すのは難しいのではないでしょうか。実際、PHIやSFなどの強豪、今年のDETなどは毎回のように引き抜かれてますし、強いチームの宿命です。なぜかKCはいつも引き抜かれませんが…。
あと、一部のファンはCoenが「病院に行っている」、と言ったことに対し、奥さんや息子さんにあらぬ誹謗中傷をしているようです。実際、息子さんは自己免疫性疾患があるらしく、病院に行っていた、とのことでその点は妻のAshley Coenさんが強く反論しています。そういうところにまで出ていって好き勝手言うのはよくないですよね。
最後に
ということで、今回のことについてつらつらと書いてみました。前回、もうブログ更新しないかもと言いましたが、状況が変わったので今後も書いていこうと思っています。
今までのBaalkeによる呪縛から解き放たれて、この数年でJAXファンとしては一番清々しい気持ちになっています。JAX界隈の雰囲気も非常によく、今この瞬間、JAXの歴史が変わろうとしているのかもしれません。ここ数年のDETのように一気に強豪に登りつめる可能性だってゼロではありません。それくらい未来は明るく開けているように感じます。
もちろん、今後超えるべき壁はたくさんあります。まずGMはじめアシスタントコーチが本当に優秀な人材で集められるのか、FAドラフトは成功するのか、などなど…。初年度ということもあり、また負け越してしまう可能性も十分ありますが、それでも2025年シーズンはポジティブな気持ちで見れるような気がします。
今後はできればCoenについて、新GMについてなどを書ければと思っています。本当はスキーム、得意とするプレーなどについても書きたいのですが、知識がないので素人がネットの情報を見て理解できる範囲になります。